BPSK信号源の製作

山田さんから、「秋月で売ってるuPC1478CがHRPTの復調に使えるのでは」という情報があり、早速買ってきて組んだが、信号源が無いと動いているのかどうかさっぱり分からない。
そこで信号源を製作しました。


まず作った(2000年5月7日)

いつもの蛇の目基板です。「信号源」ということで電源付きでケースに入れました。キチンと蓋ができる立派なつくりです。(笑)

回路図はこちら

10.7MHzの水晶発振回路の出力を、マンチェスタ符号を作るデジタル回路のクロックとBPSKのキャリアに共用します。
マンチェスタ符号を作るところは、http://www.alblas.demon.nl/wsat/hardware/generators.htmにあった回路をマネッコしてます。ただし、配線が面倒だったのでALTERAのMAXで作りました。若干ハザードが出ているので、ステートマシンに変更しないとだめかなとも思っていますが、動いてしまったので、きっとこのままでいくでしょう。

出力のスペクトラムは

センタ10.7MHz、500KHz/DIV、10dB/DIV

こんな感じです。センタが10.7MHzで+/-665KHzに山があるエネルギ分布をしています。+/-2MHzにも山がありますがこれは多分、変調信号(マンチェスタ符号)に高調波が含まれているからです。マンチェスタ符号の出力に適切なフィルタ処理がいるはずなのですが、このフィルタの検討だけで十分楽しめてしまいそうなので、これも現状のままでいくでしょう。

で、uPC1478Cに突っ込んだところ、波形は汚いですが復調はできています。一応、目は開いています。

uPC1478Cの1pinの波形。0.5μS/DIV、50mV/DIV

衛星放送のビットレートにあわせたフィルタの定数なのでこうなるんだと思います。復調回路のフィルタの検討に入りたいと思います。

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FIRフィルタを入れてみた

上の実験でuPC1478の1pinの波形が高調波を含んでいるみたいなので、信号発生側で高調波を取り除くとどんな波形になるか?が知りたくなって実験してしまいました。

方法
ロジック回路で作ったマンチェスタ符号出力は矩形波なので高調波をたくさん含んでいます。これをデジタルフィルタで処理を行い高調波を低減させます。
回路的には、はじめの回路で作ったマンチェスタ符号出力をシフトレジスタに入力し10.7MHz(=665KHz×16倍)のクロックでシフトさせていきます。サンプルを開始してから15クロック後には、シフトレジスタ各段に10.7MHzでサンプルされたマンチェスタ符号の波形が時系列で記憶されたことになります。
シフトレジスタの各出力を所望のフィルタのインパルスレスポンスのとおり重み付けして加算すればフィルタ処理したことになります。

フィルタを追加した基板。

回路図はこちら

OPアンプは手持ちの中で一番高速だったLF356Nです。R28,R29の定数をかえればマイナス電源は必要なくなるかもしれません。
MAX7064(ロジック回路)の内部回路図はこちら
16倍のクロックと15タップのフィルタなので、厳密には正しくない。はんだ付けしてから気が付いた。

フィルタのインパルスレスポンスは

h(t)=(cos(2παWt)/(1−(4αWt)^2))*(sin(2πWt)/2πWt)
W=1/2T
ここで
    αはロールオフ率、
    Tは符号のサンプリング周期

とするらしいですが、ここでは、cosの1周期の波形としました。

フィルタ出力波形(IC6の6ピン)は ↓ 
0.5uS/DIV , 1V/DIV

10.7MHzのスペクトラムは
500KHz/DIV , 10dB/DIV
2MHz付近のレベルが10dB以上下がりました。RV1で調整できます。

この信号をuPC1478Cに入力すると
0.5uS/DIV , 上100mV/DIV 下200mV/DIV
上がuPC1478C 7pinの入力信号波形、下が1pinのコスタスループのアイパターンです。PLLのロックがかかった状態です。

<おまけ>
uPC1478CのVCXOのVRを端っこまで回すとPLLがアンロックします。そのときの波形は
0.5uS/DIV , 上100mV/DIV 下200mV/DIV


以上のように、変調波形に対してフィルタ処理を行うことで「きれいな」アイパターンが出てくることが分かりました。

ところで、このフィルタ処理を信号源だけで行うことは妥当でしょうか?
変調器から復調器までのトータルの周波数特性が上記のような特性になっていることが必要で、送信側と受信側で適切に特性を振り分けることにより実現しているらしいです。
HRPTの資料を見ると、変調側のフィルタの特性は

5th order  ,  0.05deg  , equiripple phase 2.4MHz

となっていました。
ここまでやってしまってからナンですが、信号源にはこのフィルタを入れないといけないみたいです。(もっと早く見ればよかった)
信号源のフィルタをもう少しいじってみる必要がありました。

<おまけ>
次世代の気象衛星では
資料:User Station Design Justification - Baseband Processing
にこの辺のことが書いてあります。

http://www.wmo.ch/hinsman/TechSpecs.html
にあります。

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[EXCELで変調波形を作ってみる]

たとえば、10.7MHzで変調したBPSK信号をヘテロダインで別の周波数に持っていったときに、キャリアの位相はどのように変化するでしょうか?
EXCELで波形を書いて見ました。信号波はサイン波にしてあります。(高調波は省略)

fcのサイン波とfsのサイン波を掛け算すると
三角関数の積和の公式から
sin(2πfct)*cos(2πfst)=[sin(2π(fc+fs)t)+sin(2π(fc-fs)t)]/2
右辺をEXCELでグラフ化。(最後の1/2は省略)


10.7MHzを669KHz(10.7MHz/16)の正弦波で変調したときの波形。



21.4MHzを669KHzで変調

どちらも信号波形が0を横切るときにキャリアの位相が反転していることがわかります。

エクセルのワークシート。サイズが大きくなるのでデータ数を減らしてあります。

答えになっていないかなぁ


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以上

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