位相ノイズについて

位相ノイズは、信号に雑音が混ざって位相をガチャガチャと変動させるノイズのことです。
発生原因は、回路を構成する素子が発生する諸々の雑音です。

Solilock-Gの実験では、位相ノイズの測定にジャン測で安価に出回っている【hp】の4352B+43521A+8665Bを使用しています。


測定系の測定限界(残留ノイズ)は
基準信号の影響は?
VCO電源回路のノイズの影響は?



測定系の測定限界

4352Bの測定限界は、測定に使うSSG(ここでは8665B)の位相ノイズに依存します。
そこで、8665Bとほぼ同じ位相ノイズではないかと思う8664Aの信号の位相ノイズを測定して、測定限界を推測します。
比較のため、UNITEC-1受信系の検討につかったSolilock-G(5840MHz、位相比較10MHz)の測定結果を合わせて表示します。
8664Aからは2920MHzを出力し、2逓倍器で5840MHzにしています。

測定結果は下のグラフの通りです。

測定系のデータは、-6dBさげて表示してあります。厳密には6dBではないと思いますが、ざっくり進めました。
(これ間違っていますね。同じ周波数だとして-3dBですね)
このデータから、-90dBcとか-100dBcを議論するときには、4352Bでは数kHz以下のデータは使えないということが言えます。
もっと良い測定器が欲しくなっちゃいますね。



基準信号の影響
Solilock-G(に限らずPLL発振器は)は、GHz帯VCOの信号を基準信号の位相に同期させる動作をしています。
基準となる信号に位相ノイズがあると、VCOの出力信号にも位相ノイズがコピーされてしまいます。
さらに、たとえば10MHzの基準信号を使って5000MHzのVCOにPLLをかけると、基準信号の位相ノイズは50dB(20log(5000MHz/10MHz))強調されて5000MHzの信号に現れます。
従って、スペアナ等では見えない10MHzの位相ノイズが5000MHzではハッキリと見えてしまいます。
Solilock-Gの基準信号入力に、いくつかの10MHz信号源を接続してみて出力の位相ノイズにどのような差が有るのかを見てみました。



また、測定器に内蔵されていることが多いTCO627Bは、SCカットのVCXOに比べて約10dBくらい雑音レベルが高いようです。


VCO電源回路のノイズの影響

VCOの発振周波数は電源電圧によっても変動します。
VCOの電源に雑音が乗っていると発振出力の位相ノイズが増加します。

VCOの電源回路を変えると位相ノイズにどのような変化があるかを実験してみました。

実験水準
(1)78シリーズの三端子レギュレータ。出力-GND間に330uFを接続しています。
(2)VCO用電源として発売されているレギュレータ。スペックではノイズ電圧=40uVとなっています。
(3)SolilockGで最終的に辿り着いた超低雑音電源回路。
5896.25MHzのSolilock-GのVCO電源回路を(1)、(2)、(3)の3水準で動作させ、位相ノイズの違いを比べてみました。



10kHz〜200kHzで位相雑音のレベルに最大10dBも差があります。78シリーズ+330uFと低ノイズLDOでは大差が無いのも分かります。